月のない夜を一またぎ

 今日は夜が暗かった。こういう日はなるべく闇に同化したいので、地元ローカル線ホームのはしっこに立って電車を待つ。洗足池のホームの端には、夏秋冬春どの季節でも異世界への入り口のような、ぽかんと冷たい空間が広がっている。線路の両側が崖になっていて線路脇を細い草っ原が伸びていて、という別にそう珍しくない風景ではあるが、うちの近所の駅で一番鄙びた空気があって、無常感を妙にくすぐる場所なのだ。空が広い。
 夕方おそく〜夜にかけて、洗足池ホームの端で黒い影ニヤリしているハリガネのような女が居たら私である可能性がわりと高いと思います。