好きな子

 同僚のなかに好きな子がいる。仕事はできない。歳は私よりいっこ上で、喋るのは早いが、仕事の解決は遅い。いつクビになってもおかしくないところにいる子。真っ直ぐにしか進めないので、障壁に当たると横に回ることもせず、ひたすら当たっては跳ね返り、当たっては跳ね返りを繰り返す。レイアウターを巻き込んで膨大な作業を発生させ、全体の進行が数時間滞ることもしばしば。寸暇も惜しみたい書き入れ時などは見ていてこっちが憤死しそうになる。
 でもこの子はいつでも元気いっぱい。とにかく一生懸命だ。ローカルとしては前代未聞らしいが、休日でも必要とあればせっせと会社に出て来てこちらの求めに応じようとする。そして絶対に、他人を攻撃しない。こっちがいかに不機嫌に相手先からの資料をせっついたり、相手先の不備について窓口となっているこの子をなじってしまったりしても、大きな目をくりくりさせて「I know, I know!」また頼んでみる! と頑張る。たまにこっちが怠けてしまったり、間違ってしまったりしても「わかった!」と前向きに頑張る。
 私がお腹をすかせていれば、彼女が奮発して買って来たヨーグルトをほとんど全部くれる。自分が食べる為に買って来たんじゃないのかよ、と言っても「私もう食べられないからいいの!」と言う。そして引き出しを開けて、ここにチョコレートがあるから足りなかったら食べて!この他にはもう何にも持ってないけど! と言う。
 大好きなんだよね。