淋しかったんだね。とにかく淋しくて淋しくて、どうしようもなかったんだね。縛られた羽を解放できないまま、羽ばたくこともできずにどんどん沈んで行ってたんだね。もがけば自傷を深めるだけ。自分ではどうにもならない思いがあることもわかりました。ただ愛しき歌を、あなたの向かいで、歌う。

 海を越えて届いた手紙がある。古風な……。
 あれほど一人の女性を好きになったことはなかった。とあった。とりたてて言うことでもなく、理由は簡単だ。手に入らなかった女はつねに至高の座に奉られるもの。手に入らなかった失恋はいつまでもどこまでも美しく、一度手に入れてしまってからの失恋は一生消えぬ悪臭源となることもある。私の悪臭源は私を取り込んで、一度私以外のものに害をなした。人のせいにするわけではないけれど。
 どちらが幸せか? こればっかりは誰にも。悪臭よりは、きれいな思い出の方がいいのかな。
 長い手紙の終盤、ある一文のあとに、そう、これを伝えたくてこの手紙を書いたんだ。と書いてあった。
 あなたが伝えてくれたそのことは、私だけではどうしようもないことなんだよ。でも、ありがとう。 
 
 その手紙には、送り主の望みを絶つかのように何の連絡先も書いていなかった。私にとっても、その方が良かった。だからここで、言霊の存在を微かに思って宇宙の電波に乗せました。具体的には書いてなかったけど多分そういうことだと想像します。お幸せに。