一生、カワウソ暮らしだ。

『家守綺譚』(梨木香歩)読了。初めての作家。あまりにも心地良くて、200ページ足らずの本なのに一ヶ月以上かけてしまった。一人の人間を主人公とした短編が時系列に並んで全体の物語が進んで行くという体裁で、淡々とした日常のなかでたまに異次元が透けて見える日々の模様を綴っている。それぞれがさりげない話なのだが、予想される結末に向かって読者を押していく一本の力強い流れがある。その流れに少し刃向かってみたくて、一話ずつ一話ずつ区切って読んだ。区切るごとにかかる水圧が、心地良かった。そして予想していたよりも少しあっけない終わりが、余韻を跡引くものにした。
 この人の本、一冊ずつ大事に読んでいこう。

家守綺譚 (新潮文庫)

家守綺譚 (新潮文庫)