14土 晴れの日

 正味2時間の演奏会。私の曲がトリというのは聞いて知っていたが、当日にプログラムを見て、私の前に音大目指してる高校生のベ-ト-ヴェン(それも私が前回バタバタで弾いた曲)が入っていることがわかり冗談じゃないよとなる。曲の大作度でも演者の技量でも格の違いは明らかじゃんか!!演奏順反対だろうどう考えても!!プロ志望の大曲の後で私にどう弾けと。それでなくてもトリは演奏会をわりとしょって立つものだからという一応責任感のようなものを感じて今日ここに臨んだが、最後に落とすつもりですかそれはないよ。
 各々のリハが押して先生と喋る機会が無く、先生にそれを訴えることができたのは本番中の大トリ前、件のベ-ト-ヴェンが弾かれている舞台裾でだった。大声が出せないので身振り手振りでまくし立てる私に先生「経験、深みが全然違う」。「あなたは入り込むから大丈夫、自信もって」。しょうがない実際演奏順がこうなってるからには本当にそうなんだろう信じましょ。
 危なげない指さばき(前回の私と大違い)でノーミスの演奏を終えて帰って来た高校生と入れ違いに出て鍵盤の前に座る。弾き始める。ここで何を間違ったか、わけのわからん思考が展開されてしまった。いざという時の集中力がどうの世界がどうのと毎回のように周りは言って下さるがしかし一体自分はどうやってそんな世界に入ってるんだ?どのように?そのメカニズムは?
 …まんまと入れず。なぜこの本番時にそんなことを考えにゃ…!無になれ!無に! しかしそう思えば思うほど世界には入れず。散々ミスしたのちやっと邪念が払われだし、自分でも会心の出来と思える後半ラストとなった。ほんと良かった、入れないまま終わってたら皆様にも顔向けできぬ、自分としても一生後悔するとこだった。
 何が起こるかわからない、自分から何が出るかわからない、だから非日常空間=舞台上は最高に楽しい。終わった後に言われた事で一番嬉しかったのは、聴いててわかるみきちゃんは本っ当に音楽が好きなんだよね、という一言だった。この言葉、どこまでも抱いて行きます。